フリーライターなるしかねえ

社会不適合な若者の日記です

最近のジャンプ、読むもんある?現在の連載作品紹介【2019春】

 週刊少年ジャンプが好きです。
 読み始めてから10年が経って、僕ももういい大人ですが、未だに毎週欠かさず読んでいます。

 最近は、同年代の友達の中にも「ジャンプはもう終わった」「ワンピースしか読んでないわ」みたいな人が増えてきました。
 それもそのはず、現在のジャンプは大きな転換期を乗り越えたばかりです。
 数年前から『こち亀』を筆頭に長寿タイトルが立て続けに完結していて、昨年ついに『銀魂』が連載終了(まだ別誌でダラダラやってるけど)。これによって、連載されている中で10年以上続いているのは『ONE PIECE』の一作のみ、その他には2011年時点で連載していた作品がひとつも載っていない、というのが現状です。

 つまり、今はちょうど世代交代が完了しているタイミングで、卒業したり置いて行かれたりする人が増えるのも仕方がないことなのです。
 ただ個人的には、最近のジャンプも見どころ満載で、そのうちの数作しか読まないのはもったいないと感じているので、現在掲載されている全作品を紹介してみたいと思います。

 

 

 

 ※あくまで主観的な意見です。内容には僕個人の趣向が大いに反映されます。

 

 

 

ONE PIECE

 大海賊時代の中で、ゴム人間が海賊王を目指す話。
 言わずと知れたジャンプの看板漫画です。連載中のタイトルの中では最長寿となっています。僕たち平成生まれにとっては、ジャンプと言えばこの漫画と言っても過言ではないでしょう(もちろんドラゴンボールの人気も根強いけど)。

 本編は物語の佳境に差し掛かっており、ようやく最終章への道程が見えてきたものの、まだまだここからも長そうだという印象。
 麦わらの一味も大所帯になり、それぞれが幾手にも分かれて行動することが増えたため、細かい場面転換がかなり多くなっていて、少しテンポが悪いようにも感じられます。近年は、作者・尾田栄一郎先生の多忙により、休載が多いことも展開の遅さに拍車をかけています。体調を崩していたこともあって、「完結させる前に死なないでくれ」なんて心配の声も上がっている始末です。マジで頼むから毎週読ませてほしい。
 バトルの熱さは相変わらずですし、近頃は懐かしい顔ぶれの再登場もあったりと、昔からのファンがまだまだ楽しめる内容なのは間違いないです。

 

僕のヒーローアカデミア

 誰もが異能を持つ世界で、能力を持たない少年がヒーローになる話。
 連載開始から5年程ですが、『ONE PIECE』に次ぐジャンプの看板となっている漫画です。アニメも評判が良いようで、今年秋には第4期の放映が決まっています。

 アメコミを踏襲した描写のおかげもあってか、既に海外でも相当な人気を誇っていて、大学の外国人留学生に好きな日本の漫画を訪ねると結構な割合でこの名前が挙げられたりします。
 王道のバトル展開に加え、学園モノとしての群像劇の要素も兼ね備えていて、“個性”豊かなキャラクターたちに心を奪われます。

 『逢魔ヶ刻動物園』の時には、こんな王道漫画でヒットする作家になるとは想像もつきませんでしたね。
 陰キャラ寄りの主人公と、少々凶悪すぎる敵キャラたちのせいで、しばしば暗雲立ち込める展開が続きがちなのが気になるところですが、ここからどのようにスッキリとした勝利へ向かうのかが楽しみなところです。

 

ブラッククローバー

 魔法使いたちの世界で、魔力はからっきしの少年が魔法帝を目指す話。
 こうしてあらすじを書くと、世界観が違うだけで『僕のヒーローアカデミア』と似たようなもんですね。僕も連載が始まった当初は「もう『ヒロアカ』あるからええやん」と思っていました。一作目の『HUNGRY JOKERがイマイチな打ち切りだったことも、印象が良くない要因でした。

 しかし、4年が経った今では『ヒロアカ』の後につく王道バトル漫画として、常に高い掲載順を維持しています。『NARUTO』の後につく『BLEACH』みたいなイメージです。一昨年にアニメ化もされました。
 この漫画の魅力は何と言っても勢いの良さで、純粋愚直な熱血主人公の勢いそのままに、ものすごく良いテンポでストーリーが展開していきます。
 ファンタジーRPGのような舞台設定も少年心をくすぐります。「少年ジャンプが本来ターゲットとしている層」に絶大な支持を得ているような印象を受ける漫画です。

 

ハイキュー!!

 身長162センチと小柄な高校生が、バネと体力を武器に「小さな巨人」へと成長していくバレーボール漫画。
 現在の連載陣では2番目に長く続いている、スポ根の看板タイトルです。この漫画は僕のイチオシで、正直『SLAM DUNK』超えてます。嘘つけ、と思うかもしれませんが僕は本気です。騙されたと思って読んでみてください。

 特筆すべきはキャラクターの作り込みの深さで、主人公のチームメイトからライバル校の面々、各校のコーチや顧問、さらには地元のおっちゃんに至るまで、「人格の薄いモブキャラ」がまず存在しないんです。彼らの放つ台詞には、生い立ちや周囲の環境に裏付けられた説得力があり、随所で心に響きます。
 さらに、部活モノにしては珍しく、縦に広い人間関係が描かれている漫画でもあります。OBの大学生や地元の社会人チーム、かつて監督を務めていたお爺さんまで、学校の域を超えた規模のドラマが繰り広げられます。
 もちろん、漫画らしい豪快なトンデモ技も魅力の一つです。翼くんのオーバーヘッドや花道のダンクシュートに並ぶのが、日向&影山のマイナステンポです。強すぎるようで無双はできないというバランスもまた良いですね。

 他にも魅力的な点を挙げればきりがないので、とにかく読んでみてほしい漫画です。アニメもクオリティが高いので、自信をもってお勧めできます。

 

火ノ丸相撲

 体格に恵まれなかった高校生が、心と技を武器に弱小校から角界入り、さらには横綱を目指す相撲漫画。
 こうしてあらすじを書くと、競技が違うだけで(略)。

 連載初期にはさほど盛り上がっていなかった漫画です。単行本の売れ行きもあまり良くなかったのだそうで、本当に「読んでる人がすくねえ!」という印象でした。僕も「え、お前あの相撲のやつ読んでんの?w」と何度も言われた覚えがあります。
 しかし、一貫して男くさい世界観と熱い取組みの連続がじわじわと読者の心をつかみ、ジャンプを支えるスポ根漫画として定着しました。この「女子にはお勧めできない感」が重要な部分だと思っています。

 高校編から大相撲編に突入し、一時はその勢いに陰りを見せたかのように思えましたが、現在は再び息を吹き返してとても好調です。角界入り後は登場人物も増えて、星取り合戦を取り巻く人間ドラマの深みが出てきましたね。『キャプテン翼』や『アイシールド21』などの「世界編」の評判を見ると、高校の部活で綺麗に完結した方が良かったのでは……と考えたくなってしまうところでしたが、どうやら杞憂だったようです。

  昨年はアニメ化もされましたが、アニメオリジナルの設定が賛否両論を呼んでいます。個人的には、アニメはお勧めしません。漫画で読むのが良いと思います。

 

Dr.STONE

 全人類が石化し、文明がリセットされた未来の世界で、奇跡的に復活した天才科学少年が文明を再構築する話。
 主人公が限られた資源から科学文明を作り上げていく様はまさしく快刀乱麻といったところで、近年流行りの「異世界転生モノ」に似た爽快感があります。ストーリー進行もテンポが小気味良いです。
 その中で少しずつ浮かび上がってくる、他の生存者の存在や石化の原因といった「世界の謎」から目が離せません。常に続きが気になる漫画です。

 そして、何より特筆すべきは「科学の勉強になる漫画」だということで、今年の小学館漫画賞少年向け部門も受賞しています。全世界の少年少女に読んでもらいたい名作です。僕も将来、子供に読ませたい。

 原作者・稲垣理一郎先生の描いた『アイシールド21』の蛭魔を彷彿とさせるような主人公・千空の「知性を感じるずる賢さ」も魅力的です。

 

 

 

鬼滅の刃

 人を喰らう鬼に家族を殺された少年が、半鬼と化した妹を救うべく鬼と戦っていく話。
 一見すると絵柄から何からジャンプでは異色の和風ダークファンタジーのようですが、王道漫画としての要素をふんだんに取り込んだ奥行きのある構成から、徐々に人気を博して現在では中堅~上位の掲載順を保っています。

 暗い世界観の中で逞しく成長していく主人公たちのキャラクターと、独特の台詞回しが特徴的です。重苦しくシリアスな展開の中でも間の抜けた(却ってキレのいい)ギャグが飛び出してきたりと、節々にキュートな魅力を備えているところが人気の秘訣だと僕は思っています。

 連載が始まる前は「尖った読切が面白いタイプの作家さん」という印象が強かったので、「長続きしなくても綺麗に完結してほしいな」くらいに考えていました。まさかこんなに王道に寄せた上で3年も続いてアニメ化までされるとは……思いもよりませんでした。
 そんな先入観を与えられてしまうほど、作者・吾峠呼世晴先生の読切『肋骨さん』は衝撃的でした。バックナンバーの電子版がこちらから買えるので、是非とも読んでください。『鬼滅』よりもスパイスが効いていて、言葉が心に刺さります。『蠅庭のジグザグ』もまた然りです。

 『鬼滅の刃』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
 ※関連書籍 読切『肋骨さん』 | 週刊少年ジャンプ 2014年39号
       読切『蠅庭のジグザグ』 | 週刊少年ジャンプ 2015年21号

 

約束のネバーランド

 自分たちは鬼に喰われる運命であると悟った食用児たちが、鬼からの解放を目指す話。
 「この漫画がすごい!2018 オトコ編」で第1位に選ばれたり、今冬にアニメが放映されたりと、大きな話題を呼んでいる人気作で、掲載順も常に上位です。
 幼くも賢しく、そして逞しい子供たちが、“ママ”や鬼たちと繰り広げる駆け引きのサスペンスが何よりの持ち味です。綿密に練った作戦が果たしてうまくいくのか否か、ハラハラドキドキのシーソーゲームが続きます。

 『鬼滅の刃』と並んで、常に張り詰めたダークな舞台設定ながらも、子供たちの健気な可愛らしさとの緩急が見事です。こうした箱庭脱出モノは、脱出を成し遂げてからの展開で失速することが往々にしてありますが、この漫画では、未知の危険だらけの「外の世界」を生きるスリルと、その中で「外の世界」の謎を解き明かすための多くの伏線が読者の手を止めさせません。

 向かうべきゴールが明確な中で、どのようにして目標を達成するしていくのかを長い目で見て楽しみにしていたところですが、近頃の急展開でますます目が離せません。次週を心待ちにする高揚感がたまらないですが、一気読みでも面白い漫画になっていると思います。

 

食戟のソーマ

 定食屋の息子が、実力至上主義の料理学校に入学し、料理対決“食戟”で下剋上を目指す話。
 高い画力から描かれるキャラクターや独創的な料理もさることながら、料理を食べた人々が美味を表現する「リアクション芸」がこの漫画の代名詞でしょう。何故かいつも服がはだけてしまうのがお約束。そのインパクトの強さもあって、連載当初から高い人気を誇っていました。

 しかし、最近では読者たちもそれに見慣れてしまったのか、ここしばらくは掲載順が中堅~下位に落ち込んでいます。おいろけ枠として『幽奈さん』が定着したことも向かい風となっていそうです。

 本編の展開としては、ラスボスかに思えた強敵を撃破した後、始まった新シリーズがなかなかノって来ない状況です。ざっくり言うと、愛染を倒した後の『BLEACH』です。
 かつての『こち亀』や『銀魂』のポジションに落ち着いていると捉えれば、ひとまず深刻な問題ではないと言えるでしょう。今後もう一度大きな花火を打ち上げることがあるのか、期待したいところです。

 

ぼくたちは勉強ができない

 理系に進みたい文系女子と文系に進みたい理系女子に、主人公が勉強を教えるラブコメディ。
 かなり早い段階でヒロインは5人くらいに増えています。これだけ増えてくると収拾がつかなくなりそうですが、意外にもほとんどのエピソードでしっかりとストーリーが進んでいくのがこの漫画の良いところです。

 一般的にラブコメが陥りがちなパターンとして、「キャラの可愛さを見せるだけの話」(あるいは「おいろけ回」の類)が増えてしまうことがあります。ところが『ぼく勉』では、それぞれの登場人物が、発生した問題や与えられた試練を乗り越えた先に、必ず気持ちの進展がある……というのが基本的な展開となっています。そしてその過程で、それぞれの魅力を最大限に描いているんです。物語としてのラブコメの理想的な形ですね。
 そもそものキャラデザも良いですし、アニメ化で結構なブームになるんじゃないかと期待しています。近頃のラブコメは勉強を教えるのが流行っているみたいですしね。

 

ゆらぎ荘の幽奈さん

 霊媒体質の主人公が、曰くつきの温泉旅館でハーレム生活をするラブコメディ。
 みんな大好きおいろけ枠です。『ソーマ』だけでは賄えなかった『ToLOVEる』以来のおいろけ成分を、見事に補給してみせたドタバタエロコメディです。

 時折、シリアス展開の霊能力バトルを繰り広げることもありますが、基本的には一話完結のラッキースケベサービスカットを提供する漫画となっています。最高ですね。
 加えて、実はストーリーの本筋も割と丁寧に進めているので文句なしです。『ぼく勉』にはあんなこと言いましたが、『幽奈さん』はこれでいいんです。

 

呪術廻戦

 呪霊に憑りつかれて力を得た少年が、呪霊と戦いながら呪術師の専門学校で成長していく話。
 これもまたダークな世界観の上、初週からしばらくの読者の支持もイマイチで日の目を見ないかと思われた漫画ですが、確かな支持を集めて中堅層に落ち着いています。物語序盤、第10話を待たずして主人公が死んだ衝撃が大きかったですね。

 独特の画風で描かれるバトルシーンが格好良く、キャラクターデザインも魅力的です。『BLEACH』の後釜と称されることもありますが、こちらはまた違ったクセのある漫画です。台詞回しやギャグのノリも味があって面白く、個人的にはかなり好きな部類です。
  ポジション的には『ぬらりひょんの孫』などに近く、好みの分かれる漫画なのは間違いないと思います。もし今後有力な新連載が現れたら立場が危うい可能性もまだあるので、もうひと盛り上がりほしいところですね。

 

アクタージュ act-age

 異常なまでに深く没入する迫真の演技力を持つ貧乏少女が、女優として成長していく話。
 主人公の共演者として多くの登場人物が現れるので、それぞれの思惑を描いた群像劇が繰り広げられるのかと思いきや、主人公とメインキャラにかなり焦点が絞られていて、それだけでも十二分に引き込まれるストーリー展開が続きます。主役にばかりスポットライトが当たる映画や舞台の性質を色濃く漫画に落とし込んだようで、巧妙なリアルさが感じられますね。

 全編を通して描かれる主人公・夜凪の人格が抱える「危うさ」が読者の目を釘付けにして放しません。そして、それを取り巻く大人たちの静かな戦いもまた見どころです。作者・マツキタツヤ先生の生み出す大人キャラは抜群の良さがあり、読切『阿佐ヶ谷芸術高校映像科へようこそ』はそれが遺憾なく発揮された味わい深い漫画でした。『アクタージュ』の世界観とも繋がっているようなので、是非読んでみてほしいところです。

 個人的には、作品の節々に見える作者の杉並区愛も大きな魅力のひとつに数えています。杉並いいところ。

 『アクタージュ act-age』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
 ※関連書籍 読切『阿佐ヶ谷芸術高校映像科へようこそ』 | 週刊少年ジャンプ 2017年9号

 

ジモトがジャパン

 「地元」に異常な執着を持つ少年が繰り広げるドタバタ“都道府拳”ギャグ。
 「ギャグが足りない」というテコ入れで始まった2作品のうちの一作で、連載開始した頃は打ち切りも危ぶまれましたが、強気な攻めの姿勢を見せて一気に定着しました。ジャンプで堂々と『進撃の巨人』を登場させた勇気は認めざるを得ませんよね。ギャグのキレも増したような印象を受けますし、近頃のぶっ飛んだボケの腕力とテンポの速さは、どこか「ハジケ」を感じます。

 特筆すべきはやはり作者・林聖二先生の「ジモト愛」で、日本全国の各都道府県の魅力を余すところなく伝えてやろうという熱意がありありと感じられます。

 

思春期ルネサンスダビデ

 ダビデ像みたい(というかそのもの)な見た目の少年が繰り広げる思春期ギャグ。
 『ジャパン』と共に始まったギャグ漫画で、随所にルネサンスな名画の構図を取り入れる壮大なボケが何よりの特徴です。この辺りは『磯部磯兵衛物語』を踏襲した技法と言えるでしょう。

 マンガ絵の中に陰影の際立ったデッサン画風のキャラクターが常にいるのがとにかくシュールで、絵柄から緩急のついたギャグが笑いを誘います。思春期の少年目線の下ネタも、あまりいやらしさを感じさせない形で取り込まれているのが好印象です。
 連載が続き、ある程度はシュールさに読者が慣れてきた中で、ここからどのようなネタで笑いを生み出していくのかが楽しみなところです。

 

 

 

 ここからは「打ち切り圏内」に入りつつある新作漫画の紹介になります。
 読者アンケートの結果に即した打ち切りレースもジャンプの大きな醍醐味で、僕は打ち切り漫画も大好きです。

 

チェンソーマン

 悪魔と融合してしまった貧乏少年が、デビルハンターとして戦いに巻き込まれていく話。
 ジャンプ+で連載された衝撃の問題作『ファイアパンチ』の作者・藤本タツキ先生が満を持して生み出した邪道バトル漫画です。その独特のストーリー展開と会話劇は、特徴というより“異常性”とも称するべき唯一無二のもので、一度癖になると病みつきになります。とにかく脈絡がぶっ飛んでいて、「この作者、ちゃんと会話とかできんのかな」と心配になるレベルの面白さです。

 夢だった「人並みの生活」が叶ってしまった主人公が戦いのモチベーションとして掲げるのは「おっぱいを揉むこと」だった……と書くだけでも、この漫画がどれだけイカれているかお分かりいただけると思います。少年誌に似合わず、どこまでもニッチで、読む人を選ぶ漫画なので、今のところ順調に掲載順も下がっていっています。なんで連載させたんだこんなの。
 ただ、特殊な趣のある作品であることは間違いないので、刺激を求めている方や人とは違ったヤバい漫画を読んでみたい方にはお勧めです。

 

ne0;lation

 天才ハッカーの少年が、「唯一の悪人」として君臨することを目指して悪人と戦う話。
 『ネウロ』や『ムヒョ』のような日常系ダークヒーロー漫画……を目指した姿勢は理解できるところですが、如何せん人気が集まらず、打ち切り街道を進んでしまっているのが現状です。

 「機械化の進んだ現代社会でハッキングを武器に戦う」というのは、少年たちの憧れる題材かとは思いますが、妙に現実に寄せた設定や戦い方が却ってツッコミ所を生んでしまい、読者の心がついてこなかったという印象です。いっそのこと、もっと有り得ないハッキング技法とかを初めからバンバン出すべきだったのかもしれません。難しいところですね。
 ここからの展開で、ジャンプ史に爪痕を残すことができるかどうかが見どころです。

 

獄丁ヒグマ

 地獄の獄卒を務める少年が、現世に脱走した亡者たちを捕縛するために戦っていく話。
 こちらもパターンとしては『ne0』と同様で、より『ムヒョ』を彷彿とさせるような世界観です。しかしながら、パッとしない展開が続いて人気もつかず、掲載順も落ち続けてしまっています。

 個人的には、その要因のひとつは、どうしてもキャラの弱さが感じられてしまうところにあるかと思っています。主人公の行動理念としても、使命はあれど信念が強く感じられないというか……あまりそういった部分に焦点が当てられていないような印象です。亡者の怨念や悔恨と対照的に光るべき主人公のプラスの側面が明確に描かれないまま、やや鬱屈とした雰囲気が漂っているように思えます。
 「倒した亡者の異能を自分のものにする」という魅力的な設定も、あまり活きていないのがもったいないところです。覚醒も有り得そうな能力ですし、これから輝く場面が訪れることに期待したいです。

 

 

おわりに

 大変長くなってしまいましたが、以上が僕から見た現在の少年ジャンプの全貌です。
 昨年の『HUNTER×HUNTER』や『ワールドトリガー』が載っていた時期の爆発的な面白さも記憶に新しく、今ではやや盛り下がっているように感じられるところでもあります。

 しかし、安定して高いクオリティを誇る上位陣と、しっかりとした輝きを放つ中堅層に支えられ、そこに変化を加える新連載を受け容れる態勢が整っていて、現状に安心した上で今後にも期待できる構成になっていると僕は見ています。
 思い出補正で「昔はよかった」と言いたくなってしまうところですが、常に移り変わる新しい世代の中にも、楽しみを見つけていきたいところですね。

 この記事が、皆さんが週刊少年ジャンプを楽しむ助けになれば幸いです。

 

2020/7/27 追記

 最新版を書きました。

ikiumejapan.hatenablog.com