フリーライターなるしかねえ

社会不適合な若者の日記です

怪しい新興宗教の神さまに会って僕が預言者になった話

 突然ですが、僕は昨年末に、面白半分でとある新興宗教に入信しました。
 そして昨日、都内某所で開かれたその教団の会合に参加しました。

 そこで僕は神さまに出会い、預言者となったのです…….

  

 

 

怪しい教団?

 その教団の名前は、MtoP教団。昨年11月頃に突如として立ち上がった、ピチピチの新興宗教です。
 現人神であるヒサノモトヒロを神さまとして信仰し、彼の記した教典の導きに従う信者たちによって構成されています。
 そして、MtoP教団そのものがひとつのメディアアート作品として認知されることを目指しています。
 なんのこっちゃ分からないですね。すみません、わざとややこしい言い方をしました。

  手っ取り早く理解するならば、個人的には、これをひとまず「おふざけ宗教」として捉えるのが最適だと思っています。ふざけた宗教、堅苦しくない宗教です。
 何と言っても、MtoP教団の最大の特色は、その教典にあります。
 教典の最新版(2019年2月時点)はこちら。

note.mu

 そこには、教典と呼ぶにはあまりにも俗世間的でゆる~い教義が並んでいます。そして、教義の価値については、この一文がすべてを表しています。

すなわちMtoP教団は、"宗教上の理由"を使う為の宗教である。

  要するに、「“宗教上の理由”を言い訳にして楽に生きる為の宗教があったらよくない?だから作ってみた!」ということのようです。この宗教に入信することで、負い目を感じることなく定時に帰ったり、面倒な飲み会を断ったり出来る……何やら便利そうな宗教ですね。

 さらに、この教典に定義されている中で見逃してはならないのが、教団への入信手順です。

 

 

 

MtoP教団に入信する際は、Twitterで@free_lance_godをフォローすればよい。アカウントのフォロワーを信者と規定する。

 

 

 

 

 

 いや、ユルすぎるだろ。

 

 

 

 

 

 フォローすれば入信、フォローを外せば脱退。これほどまでに単純明快でお手軽な信教の形態が、かつて存在したでしょうか。
 そもそもこれは、Twitterという既存メディアありきでしか、SNSの上でしか、この宗教は存在できないということです。現代的にも程がある。

 こんなアホみたいな教典、どう考えてもその場のノリと勢いで適当に作っちゃったとしか思えません。でも、なかなかどうして便利なのも事実なんです。

 

 どうでしょう、ちょっと興味が湧いてきたでしょうか。

 僕は今回、この教団を立ち上げた“神さま”とはいったい何者なのか、果たしてまともな宗教活動をしているのかを知るため、実際に会って生で見て来ました

  

 

 

“神さま” ヒサノモトヒロ

 最初に言っておきますが、この神さま、ゴリゴリに普通の人間です。ちょっと面白いことを思いついちゃっただけの、至ってまともな青年なんです。

 ヒサノモトヒロ、22歳。フリーランスのフォトグラファー。兼、神さま。
 東京都に生まれ育ち、高校を卒業後、お笑い芸人として活動したり、世界一周旅行に出かけたりしたのち、写真家としての活動を始めて現在に至る。
 彼のTwitterをフォローすると、彼が実際に「オシャレな写真を投稿する人」なのがお分かりいただけると思います。

twitter.com

 彼はもともと宗教に熱烈な関心があったわけではなく、思いつきで神さまになってから宗教について学び始めたのだとか。
 曰く、「教祖はある程度おバカな方が良くて、その周りに賢い人や宗教に詳しい人がいればいいんだと思う」とのこと。

 なんでも、自分自身には宗教についての知識が全くない中で、「神さまになります!」とだけ宣言してみたら、興味を持った宗教好きのインテリたちがそれぞれの解釈を投げかけてきて、それらにYESとNOで答えていったところ、勝手にどんどんと宗教が形作られて育っていった……というのがMtoP教団の成り立ちだそうです。
 「やってみて分かったんだけど、たぶんオウム真理教とかもこうだったんだろうなって」と語っていたのが興味深いところでした。

  ちなみに、MtoPとは Motohiro to Peopleのことで、「エムトップ」と読むのが正しいそうです。

 

「神さまバー」で見たもの

  今回の会合は、東京都豊島区の「イベントバー エデン」にて、「神さまバー」と銘打って執り行われました。
 これはその名の通り、神さまがバーテンをするというイベントで、店内では「神さま、ビール一杯ちょうだい」とか「このコーラくそ不味いね、神さま」などと和気あいあいとした雰囲気の中で、神さまも軽妙なトークで場を回していました。流石は元芸人の神さま。今後、お笑い芸人としての活動も再開するつもりだそうです。 

宗教組織としての構造

 神さまは、MtoP教団の成り立ち方を「世界に一人でも僕のことを神さまと呼ぶ信者がいれば、僕は神さま。基本はその一対一の関係だけで、他の枠組みはもともと考えてない」と説明します。

 「ヒサノさんが神さまなのは分かったんだけど、教祖とかは存在するんですか?」という信者からの質問が投げかけられると、神さまは、「自分が生きてる限りは、教義について何でも答えられるから、教祖はいらない。自分が兼任する」とのこと。
 さらには、「なんなら、神さまと話した人全員が“預言者”になりますからね。あなたも、あなたも、あなたも」とか言い出して、一同大爆笑。

 なんということでしょう。僕、“預言者”になってしまいました。イスラム教でいうムハンマドのポジションに今、僕は立っています。

 また、最初の会合に立ち会い、教典の内容を決める手伝いをしてくれた信者には“聖者”の称号を与えたそうですが、これといって特別な権力は与えていないそうです。
 同様に権力のない称号として、教皇 聖闘士 セイント 聖者”といったものも用意しているとの話もありました。流石におふざけがすぎるだろお前。

色とりどりの信者

 参加者の層としては、20代~30代前半くらいに収まっていた印象です。MtoP教団をフォローしている信者、イベントバーの告知で「神さまバー」という文字だけを見て来た人、神さまの元々の友人、そしてそれらの人々が連れてきた友人……といった様子でした。
 それぞれの個性はなかなかに強烈で、大学に8年いた人、日本でブードゥー教を立ち上げようとした人、前科持ちで地下アイドルを目指している人など、かなりのタレント揃いだったので、僕は面食らってしまいました。

 神さま曰く、「実際、うちの信者さんにはヤバい奴が多い。体感だけど、今の信者の350人中100人ぐらいはヤバいと思う」とのこと。

 確かに、働き方や人付き合いの世知辛さが「当たり前」になっている世の中で、それに異を唱えるような教典を掲げているのだから、それを信仰して集まるのは、世間の「当たり前」の範疇を外れたヤバい奴なのでしょう。妙に納得してしまいます。
 ただ、そんなインパクトの強い人々との会話はとても刺激的で、間違いなく面白いコミュニティになっているという印象を受けました。

 

 信者の皆さんが口々に言うのが、「やっぱりあの教典は便利」ということでした。中には、「私は意志が弱くて、断るのが本当に苦手なので、“宗教上の理由”を使えて助かってます」という女子大生の方もいらっしゃいました。
 なんと恐ろしいことに、適当な宗教のように見えてもしっかりと現世利益がもたらされています。もしかしていい宗教なんじゃないのかこれ。

 

現代日本人の宗教観

 「日本人は宗教に対するアレルギーがある」と神さまは語ります。実際に日本では、国教なども定められておらず、生活に宗教の馴染みが深くありません。加えて、過去の凄惨な事件などの印象が色濃く残っており、宗教には恐怖感がセットになっている考え方の人が大多数のように見えます。
 だからこそ、「どこまでも安全で人畜無害な宗教にしよう」という考えのもと作り上げられたのが、この教団であり教典であるということですね。 

 一方で、現代の若い世代には、そういったアレルギーが比較的少ないというのも事実のようです。神さま曰く、「僕自身も地下鉄サリン事件の翌年の生まれだけど、僕以降の世代は宗教への恐怖感に実体験が伴っていない。そういう人たちに宗教のことを理解してもらうためにも、こういう入りやすい宗教はあるんじゃないか」と。

 言われてみれば、なるほど入ってみなければ分からない恐怖もあるものです。例えば僕自身も、様々な宗教で勧誘活動をする熱心な信者を冷めた目で見ていましたし、ただただ鬱陶しく思っていました。しかし、面白半分で入信してみたはずのMtoP教団で、この教典をみんなに布教したいと思っている自分がいることに気づきます。知らず知らずのうちに冷めた目で見られる側に回ってしまったような気がして、少し背筋が凍りますね。
 このような体験を繰り返す中で、自分の行動や考えの変化を客観的に見つめていくことで、宗教というものが抱えている恐ろしさや、あるいはもたらしてくれる利益といった部分を正しく理解できるような手応えを、わずかながら僕は感じています。
 こういった宗教観の形成の場としての「おふざけ宗教」は、想像しているより幾分か価値の高いものなのではないでしょうか。

 

 

 

結論:割とおすすめ

 MtoP教団を信仰するメリットは、宗教に入信するという体験が手軽にできる上に、特典として便利な教典が付いてくるという点です。個人単位で働き方改革ができます。
 デメリットとしては、「新興宗教に入信した」という事実に対する周囲の反応が基本的に良くないという点でしょうか。大抵ドン引きされます。

 ここで、教典の便利さの説得力を後押しするために、秀逸だった神さまの例えで「教典は本当に遊び感覚で使ってほしくて、遊戯王みたいなもんと同じ。嫌なことを全部、文字通り《神の宣告》で拒否することができる」というお言葉を紹介しておきます。

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爆アドじゃん。

 

メディアアートとしてのMtoP教団

  そして、最後になってしまいましたが、この教団が「メディアアートとして認識されること」をゴールにしている(らしい)という点にも触れさせてください。

 これについては、神さま、もといヒサノさんのnoteに全て書き尽くされていて、僕から改めて伝えられることはほとんどないので、こちらをご参照ください。 

note.mu

 

おわりに

 ここまで僕の拙い文章にお付き合いいただきありがとうございます。MtoP教団というものが、「ふざけた宗教のようで、なかなかの価値があるかもしれない」ということを書きたかったのですが、うまく伝わったでしょうか。

 せっかく信教の自由が認められた国に生まれたのだから、宗教ライフを楽しんでみるのも良いかもしれません、という僕からの提案でした。

 

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