フリーライターなるしかねえ

社会不適合な若者の日記です

最近のジャンプ、読むもんある?現在の連載作品紹介【2020夏】

 週刊少年ジャンプが大変なことになっています。
 今年に入ってから、『鬼滅の刃』や『約束のネバーランド』、『ハイキュー!!』といった近年のヒット作が立て続けに完結し、各所で「少年ジャンプはもう終わった」「最近のジャンプ、なんか読むもんある?w」といった声が高まっています。
 かつて、『DRAGON BALL』や『SLAM DUNK』が終わった頃に、皆がジャンプを“卒業”してしまった……みたいなことが、またしても今、まさに起こっているわけです。

 前回(昨年春)の記事では「転換期」と表現しましたが、結果として、現在の連載陣は半数が2020年に開始した作品で占められているという状態。主力が抜けてしまった一方で、まだ十分に持ち味を発揮できていない作品も多く、もはや「暗黒期」に突入したと言っても過言ではありません。

 しかし、だからといって「もう読むもんないわ」ではあまりにもったいない。個人的には、人気作の完結にばかり気を取られて、今のジャンプの見どころを見落としている読者も多いと感じています。どうにかしてその面白さに気づいてほしい。ここで今一度、現在掲載されている全作品を紹介させてください。

 

 

 ※あくまで主観的な意見です。内容には僕個人の趣向が大いに反映されます。

 

 

 

柱となる上位層

 人気至上主義のジャンプにおいて、アンケートで大量の票を集め、常に高い位置に掲載されている人気漫画群です。
 「このためにジャンプを買っている」なんて人も多い、ジャンプの柱ですね。

 

ONE PIECE

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 大海賊時代を迎えた世界で、ゴム人間が海賊王を目指す冒険譚。

 言わずと知れた現在のジャンプの看板漫画。連載は23周年を突破した、ぶっちぎりの最長寿作品です。
 「ワノ国編」もいよいよ第三幕、物語は佳境に差し掛かって……と言うより、もうずっと佳境にいるような盛り上がり。もちろん掲載順は常に上位をキープしており、揺らぐことのない人気を見せています。

 大ヒットの末に、勧善懲悪の王道少年漫画という評価が下されていることも多いこの漫画ですが、主人公たちは海賊という明確な“悪”。自由でありながら反道徳的でもある彼らを、痛快で鮮烈なヒーローかのように描きながら、独裁や紛争、宗教、人種差別といったテーマにも切り込んでいく、非常に尖った作品であることを忘れてはいけません。

 作者の多忙による休載の多さも相変わらずですが、層の薄くなった現在のジャンプでこの作品の存在感はあまりに大きく、休載の号では物足りなさが目立つように思います。マジでお願いだから毎週読ませてほしい。

 

僕のヒーローアカデミア

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 誰もが異能を持つ世界で、能力を持たない少年が最高のヒーローになるまでの物語。

 これも今や説明不要となった、『ONE PIECE』に次ぐジャンプの看板漫画です。現在のジャンプでは2番目に長く続いている作品ですが、なんとまだ6年目。ここからも、連載陣の世代交代が窺い知れますね。

 正義のヒーローという素直な題材に加え、わかりやすい能力バトルが繰り広げられる、まさしく王道と言える漫画。アメコミを踏襲した表現が特徴で、世界的にも高い人気を誇っています。ジャンプの王道作品にしては珍しく快活キャラでない主人公や、 ヴィラン が活躍しすぎてしまう展開が相まって暗雲が立ち込めることもありますが、間違いなくジャンプの柱となる主力作品です。

 いや、本当に作者の悪役に対する愛が溢れ出てしまっているんですよね。激化する正義と悪の戦いは、果たしてスッキリした決着を迎えることが出来るのか、僕もハラハラしながら見守っています。

 

ブラッククローバー

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 魔法使いたちの世界で、魔力はからっきしの少年が魔法帝を目指すファンタジー

 間違いなく「少年ジャンプが本来ターゲットとしている層」に絶大な支持を得ている漫画です。NARUTO』の後につく『BLEACH』よろしく、『ヒロアカ』の後につく王道バトル漫画として、常に高い掲載順を維持しています。

 この漫画の魅力は何と言っても勢いの良さで、純粋愚直な熱血主人公の勢いそのままに、迫力のある戦いが次々に繰り広げられます。近頃は敵も強大になってきて、持ち味だったテンポの良さがやや失われているのが少し気になるところでしょうか。

 少年漫画とはかくあるべしといった雰囲気の世界観とアツさで、とにかく少年心をくすぐってくれるのが最大の魅力でしょう。カッコいい魔法!カッコいい剣!これがたまらないんですよね。

 

Dr.STONE

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 文明がリセットされた未来の世界で、天才科学少年が文明を再構築するクラフトアドベンチャー

 スリルに満ちた知略的な戦いが見られると同時に、科学知識が身についてためになる、二度おいしい漫画。主人公が200万年分の科学進歩を一気に駆け上がっていく様子は爽快感バツグンで、続きが気になるハイペースな展開が読者の心を掴んで放しません。アニメも好評で、来年には第二期の放送が決まっています。

 いわゆる「なろう系異世界転生モノ」のプロットを、工夫に工夫を重ねてジャンプ作品に落とし込んだような印象を受ける現代的な漫画でもあります。ずば抜けて能力の高い天才型主人公を中心に据えつつも「俺TUEEE」な無双展開が鼻につくことはない、細かな知恵と気配りが見事な構成です。

 どこまでも知性の魅力が溢れる作品で、読んでいると自分がどんどん賢くなっているような錯覚さえします。全世界の少年少女に読んでほしい。

 

呪術廻戦

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 体に呪霊を宿した少年が、呪霊と戦いながら呪術師の専門学校で成長していくバトルドラマ。

 最初期こそ沈みかけたものの、ぐんぐんと人気をつけて掲載順を上げてきました。ヒット作の完結により、半ば繰り上がり的に上位に躍り出た印象もありますが、元々が過小評価されていただけで、十分に看板を張れる面白さです。

 作者・芥見下々先生が「どこかでみたような作風」と自虐する通り、ジャンプ漫画のエッセンスが随所に込められた漫画です。何も知らない人が読んでもクセになる旨味でおいしく味わえますが、これを過去に『幽白』『ジョジョ』『BLEACH』『ハンター』『ナルト』等々を読んで育った人が読むと、「この風味は……!!」とノスタルジーにも似たエモい味わいが広がります。
 当然、ただの焼き直しではなく、心に刺さる独特の死生観が表現されていたり、誰もが見落としていたであろう伏線が仕込まれていたりと、目新しく刺激的な内容も盛り沢山。名作のノウハウに、オリジナルの解釈と新時代の創造性を織り込んでさらに深みを増している、現代のジャンプを象徴するような漫画です。

 個人的には、往年のジャンプ漫画にありがちな“敵が親友になる描写”への特殊なアプローチが素晴らしいと感じています。必見の価値ありです。

 

 

 

脇を固める中堅層

 早期打ち切りを免れ、中堅層に定着した漫画群。
 上位を狙うものもあれば、下落しそうな危うさのものもあり、しかし間違いなくすべてが誌面を盛り上げている、見逃せない作品たちです。

 

アンデッドアンラック

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 不死の能力を持つ男が、不運の能力を持つ少女と共に「最高の死」を見つけるお話。

 時にはやや低めの掲載位置に収まることもありますが、中堅の中では最も上位層に近い作品。インターネッツの高年齢層を中心に、根強い人気を博しています。

 SCPやUMAといった、都市伝説じみた扱いづらい題材を巧妙に組み込んだ奥深い設定の中で、純愛ドタバタラブコメと激アツ能力バトルを両立しているとんでもない漫画です。クエストを軸に進んでいく物語と、禍々しいデザインの敵キャラとのバトルには、オープンワールド系のゲームのような魅力も携えています。

 この漫画は僕のイチオシですが、情報量が多く、表現も繊細で、何と言うか“素養が要る”作品だと感じています。少なくとも、「『ワンピース』と『ヒロアカ』のついでに見る」程度のパラ読みでは、その面白さに気づくことすらできない可能性が高い。しっかりと読解力を駆使して、集中して考えながら読む必要のある、極めて味わい深い作品です。
 設定の深いファンタジー作品に触れたことのある人がじっくりと読めば、この『アンデラ』もまた、絶妙なバランス感覚で綿密に練り上げられた、並外れて高い完成度の作品であることがすぐにわかると思います。間違いなく、歴史に残る超大作です。今すぐ単行本を買って追いつきましょう。

 

マッシュル -MASHLE-

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 魔法の使えないマッチョな少年が、筋力だけで魔法界をのし上がっていくファンタジー

 連載が開始されるや否や、若年層を中心に大変な人気を博し、上位層も狙えるほど盤石の地位を築き上げました。Web(ジャンプ+)での評判が過去に例を見ないほど高かった作品でもあります。

 その実、内容はかなり素直な「なろう系」。バトル漫画でありながらギャグ漫画でもあるような、『ワンパンマン』にも似た容赦のない主人公無双によって、早いテンポで小気味好く物語が進んでいきます。Dr.STONE』が苦労して切り拓いた道のギリギリ崖際のところを突っ走っているような印象です。
 主人公の持つ力が努力の結晶であることや、主人公が気の抜けたキュートな(嫌味ったらしいドヤ顔をしたりしない)人格であること、主人公以外のキャラ同士のバトルは緊迫して白熱していることなどによって、「なろう系」展開の漂わせがちな不快感を大きく和らげています。作画もシンプルで、設定もどこかで見たことがあるものがほぼそのまま。頭を使わずにサクサク読める省エネ漫画です。

 現代の需要を的確に突いた作品であることは間違いありませんが、おじさんや逆張りオタクはどうしても好きになれない内容であるようにも思います。流石に世界観がポッターすぎて不安になる。

 

チェンソーマン

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 悪魔と融合してしまった貧乏少年が、デビルハンターとして戦いに巻き込まれていくダークヒーロー邪道バトル。

 前回は「打ち切り圏内」として紹介してしまったこの作品ですが、そのぶっ飛んだ作風と予想のつかない展開で、着実に人気を集めて中堅層に定着しました。『鬼滅』といい『呪術』といい、序盤で落ち込んでも後に人気を博す例が最近のジャンプには多いですね。

 前作『ファイアパンチ』でも見られた、心を抉るようなハードな展開と、ニッチなギャグとの緩急が見事で、読者の情緒を揺さぶり続けます。マキマさん…もうやめてくれえ……。
 そして、それを際立たせる映画的な演出が特色です。コマ割りと言うより“カット割り”とも称すべき構図と、異形の者たちが暴れまわる姿を鮮やかに描く表現には、映画好きな作者の素養を色濃く反映したユニークな感性が垣間見えます。いつか超絶最高クオリティで映画化されてくれよな。

 頭のネジが外れているようでいて、実のところは緻密な構成もまた大きな魅力で、「ここまで考えられてたのかよ」と驚きながら読むのも楽しい漫画です。鬼才とも奇才とも言える藤本タツキ先生の創り出す世界を、強い心を持って楽しみましょう。

 

アクタージュ act-age

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 異常なまでに深く没入する迫真の演技力を持つ貧乏少女が、女優として成長していく物語。

 トップにこそ上がってこないものの、安定したクオリティで確かな支持を集めています。実在の役者として主人公に“仕事”させたり、2022年の実写舞台化に向けて全国リモートオーディションを行うなど、話題に事欠きません。

 役者という題材ながら、紛れもなく“少年ジャンプ”している、あるいは“スポ根”しているというのが印象的な漫画。ピーキーな危うさを抱えた主人公を中心に、演劇の世界に確かに存在する競争や勝負の世界を描き出すことで、そこにライバル関係や師弟関係、さらには渦巻く陰謀までもを見出し、戦いの中で成長するドラマを描くことができています。
 同時に印象に残るのが、“演技をする”ことを表現する絵の説得力。キャラクターたちが役に入る瞬間が一目でわかる描写や、彼らの演じる舞台や映画の迫力は、“演技”を最適な形で漫画に反映させたものと言えるでしょう。

 個人的には、作中の演目そのものが持つメッセージ性も『アクタージュ』の物語に包括されているのが面白いところだと思います。複層的というか、重厚感があるというか。もちろん、「役者の顔がいい」だけで読めてしまう表面的な魅力も最高なんですけどね。

 

ぼくたちは勉強ができない

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 理系に進みたい文系女子と文系に進みたい理系女子に、主人公が勉強を教えるラブコメディ。

 堅実なラブコメ枠として定着し、無事にハッピーエンドを迎えたかと思いきや、まさかのヒロイン5人のマルチエンド路線に入ってから掲載順が不安定になっています。それでも全員分を描き切るまでは打ち切られないことが確約されている、なかなか例を見ないヒット作です。実は現在4番目の長寿作品でもあります。

 ラブコメ漫画としては珍しい、ギャルゲー形式で各ヒロインのハッピーエンドルートを見届けられるというマルチエンド。ジャンプ初の試みを実践している、挑戦的な作品です。
 前回も述べた通り、試練や課題を乗り越えた先に進展があるというのが綺麗な構成でしたが、個別ルートに入った時点でそういった障壁が大方クリアされていたヒロインのルートは、どうしても盛り上がりに欠ける印象がありますね。

 人気が分散している分、各ルートで票が集まらず落ち込んでしまうのも仕方がないでしょう。おそらく、一番人気の桐須先生がラストを締めくくってくれるはずなので、最終的にはいい感じになるんじゃないかと安心して見守っています。幸せならOKです。

 

ミタマセキュ霊ティ

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 霊媒体質の女子のもとに現れた霊専門のボディガード「セキュ霊ティ」が繰り広げる除霊ギャグ。

 ジャンプ+の話題作『剥き出しの白鳥』を連載していた鳩胸つるん先生の本誌デビュー作。若干の低迷を見せつつも、打ち切り路線には乗らず定着しました。万人受けこそしていないものの、それでもある程度は広い層に受け入れられているような印象です。

 少女漫画にも似たデザインのほのぼのとしたキャラクターたちが見せるシュールなギャグや時折暴走する狂気を、ツッコミ目線で楽しむ漫画です。明確なツッコミは不在で、ツッコミ役に見えるキャラでさえ平然とボケをかましてきます。読者側に「なんやねんそれ」と言えるセンスがないと、途端に退屈な漫画になってしまうおそれすらあります。

 週によっては「意味がわからなかった」という感想も多く見受けられますが、僕は割と毎週好きです。全体的にどこまでも穏やかで“やさしいせかい”なのが素敵ですね。最近流行りの「傷つけない笑い」という言葉が僕はあまり好きではないのですが、この漫画はそれをかなり良い形で実現していると思います。

 前作『剥き出しの白鳥』はより狂気に振り切っていてキレ味も鋭いので、『ミタマ』が物足りないと感じた方は読んでみてください。

 [第一羽]剥き出しの白鳥 - 鳩胸つるん | 少年ジャンプ+

 

 

 

生存競争の下位層

 票の獲得にやや苦戦し、上位にはいけなかった漫画群。
 打ち切りの恐怖に抗いながら、返り咲きを狙う熾烈な生存競争も見どころです。

 

夜桜さんちの大作戦

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 最強のスパイ一家に迎え入れられた高校生が、幼馴染を守るために奮闘するスパイコメディ。

 低年齢層を中心に一定の支持を獲得し、センターカラーを複数回獲得するなどしたものの、現状の掲載位置は安定せず、なかなか中堅下位から浮上できずにいます。もうすぐ一周年を迎えますが、いわゆるノルマン現象で生き残っている印象が強いですね。

 個性豊かなではた迷惑な兄弟たちと、過酷ながらもコミカルな戦いに巻き込まれていく主人公を応援するのがメインの楽しみ方でしょうか。ギャグのセンスはちょっとズレている気がしますが、絵柄が可愛くて、女の子受けも良さそうです。強いて例えるなら、初期の『家庭教師ヒットマンREBORN!』に近いと思います。つまり、まだ化ける可能性もある。

 良くも悪くも、小学四年生がする妄想がそのまま紙面に描かれたような夢のある漫画です。授業中に突然やってきた悪役から女の子を守って戦う妄想とか、みんなしたことありますよね? え、俺だけ?

 

森林王者モリキング

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 イケメンな人間の姿をしたカブトムシが、すべての生命の王を目指す“王道”昆虫ギャグ。

 『青春兵器ナンバーワン』の長谷川智弘先生の最新作。その爆発力は健在で、12話と早い段階でセンターカラーを獲得するなど、ひとまずは盤石の立ち位置を確保しました。とはいえ、最近のジャンプはギャグ漫画が渋滞してきているため、まだしばらくは争いを勝ち抜く必要がありそうです。

 とにかく頭にカブトムシのツノが生えたイケメンが常に画面に居るパワーが強烈で、しかもこれがめちゃくちゃ優しくていい男なんだから、もう笑うしかない。一貫してクスっと笑いやすいネタを用意している上に、時々とんでもない大爆発を見せる回が見られるので、期待せずにはいられません。

 ジャンプ+公式のインタビュー記事(下記)を読んで以降、僕は長谷川先生のファンです。『モリキング』が売れたら、もっとスマブラ界隈に露出してきたりしないかな。

 【第1回】ジャンプの連載マンガ家ってどんな生活をしてるの?ピザパーティを口実に若手ギャグ作家の作業場を見学してきた - 少年ジャンプ+α

 

AGRAVITY BOYS

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 地球に似た惑星で、4人の天才少年が滅亡した地球を再興する術を探すズッコケ宇宙開発ギャグ。

 打ち切りまっしぐらとはいかないまでも、中堅以上に浮上することもなく低迷しています。作風柄、いい年こいたお兄さんたちの心を掴んだものの、低年齢層の支持が全く集まっていないような印象です。

 女日照りの思春期男子が繰り広げるドタバタは、お下劣なギャグも多く含んでいて、いかにも男子校ノリの極致といった内容。『ぐらんぶる』を少しマイルドにした感じ、と表現するとわかりやすい方もいるかもしれません。

 個人的には生き残って欲しいけれども、このまま打ち切られても残当といった気持ち。あと一部で「汚いアストラ」とか呼ばれてるのがツボです。

 

タイムパラドクスゴーストライター

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 未来の少年ジャンプを手にした漫画家が、盗作で連載を始めるタイムスペクタクル。

 『鬼滅の刃』完結号に合わせて連載が開始され、早い段階で増ページを獲得するなど、編集部の期待も高そうに見える漫画ですが、大きく掲載順を落としてしまい打ち切り街道を進んでいるように見えます。

 巷を賑わせている問題作です。詳しくはこちらを読んでください。

ikiumejapan.hatenablog.com

 依然として「どうすんだよこれ…」で読者が引き付けられている状態で、いい加減泥船感が拭えなくなってきましたが、僕はこの作品の狂信者なのでまだ大逆転の夢は捨てていません。この漫画はまだまだ怖いです。

 

ボーンコレクション

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 ポンコツ陰陽師の高校生が、人間になりたい大妖怪と共に戦う妖怪バトルコメディ。

 本誌に読切が掲載された時にはヒットを予感した読者も多かった本作ですが、週を追うごとに下落して下位層に定着してしまいました。刺さる人には刺さっているようですが、かなり範囲が狭いようです。

 『鬼滅の刃』が見せたゆるさや戦闘中のギャグは間違いなくヒットの要因でしたが、この漫画はそれに振り切ったような作風です。バトル展開の中にも張り詰めた緊迫感はなく、ゆる~い空気が流れています。力の抜けたデフォルメも可愛い。

 何と言うか前衛的で、少年ジャンプ的には結構チャレンジしている漫画だと思います。ギャグともバトルともラブコメともつかない、毒にも薬にもならないふわふわした微妙な存在感が独特で、何か新しい試みの匂いを感じます。

 

 

 

定着を狙う新連載陣

 ヒット作が続々と完結したことに伴い、新連載も続々と始まりました。
 次のヒット作は、ここから生まれるかもしれません。いち早くポテンシャルを見出して、楽しく古参アピールをしましょう。

 

あやかしトライアングル

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 妖怪退治を任務とする忍者の少年が、幼馴染の少女を守るべく伝説の妖怪と戦う恋愛ファンタジー

 『ToLOVEる』で知られる名匠・矢吹健太朗先生による新連載。なんと、その内容は衝撃の性転換モノでした。『ゆらぎ荘の幽奈さん』の後釜に相応しく、相変わらずの高い画力で描かれる美少女たちが紙面を彩ります。
 今のところ、露骨なエロコメというよりは、ちょっとエッチな学園アクションバトルといった印象。世間が求めているのはどう考えてもエロコメ路線ですが、果たしてここからどう展開していくのかが楽しみです。

 中堅以上に定着することはほぼ確実と見ていいでしょう。ジャンプには“この枠”が必要です。ええ、必要なんです。

 

破壊神マグちゃん

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 田舎町の貧乏少女が、古の破壊神を復活させてしまうほんわか破滅系コメディ。

 愛くるしい絵柄とゆるいギャグの中に、心温まるドラマが味わえる日常系のストーリーです。可愛い見た目の破壊神がエグいビームを放つのも、シュールでインパクトがありますね。

 本誌上ではギャグの供給過多が起こっていますが、こちらはハートフルな優しい人情モノに寄せています。上位層にダークな題材のものが多いので、貴重な癒し成分として定着してほしいところです。

 いや、こういうのがないと心が持たないよ、マジで…マキマさん……。

 

灼熱のニライカナイ

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 南の島に左遷された警察官が、謎の少女や海の仲間たちと繰り広げる異色刑事ドラマ。

 『べるぜバブ』の田村隆平先生による最新作。前作『腹ペコのマリー』は打ち切りの憂き目に遭ってしまいましたが、今作はより『べるぜ』に近い作風に戻してきたようにも感じられます。

 読みやすくテンポの良いバトル展開に定評のある田村先生の持ち味に加え、少女や「海の教団」にまつわる謎が、読者を惹きつけるフックになっています。個性的な敵キャラの登場にも期待が持てるので、どれだけ面白くできるかが楽しみなところですね。

 正直なところ、上位にまで上り詰める予感はあまりしませんが、『べるぜバブ』よろしく中盤で着実な人気を得られる漫画にはなれそうです。今後の中堅層の争いに注目が集まります。

 

僕とロボコ

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 とある家庭に突如やってきた規格外のメイドロボが巻き起こすドタバタ日常ギャグ。

 またしてもギャグです。本誌に読切が載るたびに大きな爪痕を残していた宮崎周平先生がついに本誌連載デビュー。怒涛のジャンプパロディネタが売りの、パワー溢れる漫画になっています。令和の『太蔵もて王サーガ』と言ってもいい。

 今作のロボコにも見られるような、独特の顔(僕はこれを勝手に「宮崎顔」と呼んでいます)のメインキャラがサイコなド畜生で、そのハチャメチャな振る舞いに周囲が巻き込まれる……というのが宮崎先生の主な作風でしたが、宮崎顔キャラのあまりの鬼畜ぶりにヘイトが集まってしまうのが難点でもありました。『隣の席の珍子ちゃん』とか、ぶっちゃけギャグのキレより不快感の方が目立っていたように思いますし。
 ところが今作は、宮崎顔のロボコと、周囲のキャラクターとの関係性でバランスが取れていて、巧みなヘイトコントロールに成功しているように見受けられます。

 この調子で上手くいくと、『ミタマ』や『モリキング』の地位を脅かす存在になりそうです。ギャグ枠を奪い合う闘争の行方から目が離せません。

 ただ、ロボコがいちいちパンツ見せるのはどうかと思う。普通に勘弁してほしい。

 

おまけ

 まだ掲載されていませんが、ひとつだけ、この夏の連載開始が内定しているタイトルがあります。
 それがこちら。

 

BURN THE WITCH

 『BLEACH』の久保帯人先生による最新作。少年ジャンプが総力を挙げる一大プロジェクトで、秋にはアニメが始まることも発表されています。

 オサレ師匠が本誌に帰って来るならもう安心……と言いたいところですが、直近で大ヒット作家が大スベリした例もあるので、ドキドキが止まりません。座して待て。

 前日譚となる読切が既に公開されているので、以下から確認してみてください。

 BURN THE WITCH/緊急特別掲載 - 久保帯人 | 少年ジャンプ+

 

 

おわりに

 大変長くなりましたが、以上が僕から見た現在の少年ジャンプの全貌です。

 少年ジャンプの現状について、様々な評価があると思いますが、ひとつ覚えておいてほしいのは「引き延ばしがなくなってきている」ということです。
 以前なら無理やりにでも引き延ばされていたであろうヒット作が、スパッと完結を迎えられている。個人的には、この傾向は『バクマン。』以降、より顕著になったと感じています。「一気に駆け抜ける漫画があったっていいだろ」ということですね。
 2010年代以降、明確に引き延ばされたのはたぶん『ニセコイ』くらいで、冒頭に述べた『鬼滅』も『約ネバ』も『ハイキュー』も、作者の終わらせたいタイミングで終わらせることが出来ている。「ジャンプ編集部はすぐ引き延ばすからな」なんて常識は、もう過去の話になったと僕は思うんです。

 長期連載のヒット作も、一番良いところであっさり完結する。それが新しい常識となれば、今後もジャンプ誌面上における入れ替わりは一層激しくなる傾向にある予感がします。
 入れ替わりが激しくなるということは、新しく面白い漫画に出会える可能性が上がるということです。それなのに、せっかくの新連載をパラ読みしてすぐに切り捨ててしまうというのは、あまりにもったいない。打ち切り漫画さえも楽しむくらいの気持ちでいれば、少年ジャンプはまだまだ読み続けるに値するどころか、290円をはるかに超える価値と輝きを見せてくれるようになります。

 もし、今回挙げた中に気になる作品があれば、是非単行本を買って追ってみてください。ジャンプ+や電子書籍アプリを利用するのもオススメです。
 この記事が、皆さんが週刊少年ジャンプを楽しむ助けになれば幸いです。

 

 

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