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社会不適合な若者の日記です

STAGE:0 LoL部門のコーチ対決がアツい

 全国の高校生たちが繰り広げる熱きeスポーツの祭典がクライマックスを迎えている。

stage0.jp

 日本一の栄冠を手にするのは、果たしてどのチームになるのか。青春をeスポーツに捧げた少年少女が見せる最高峰の戦いから目が離せない。

 同時に、それを支える大人たちの戦いも熾烈を極めている。中でも今大会において特徴的なのは、学生たちを指導し、練習を手助けするコーチ陣。強豪校で指揮を執る“名将”が、学生eスポーツの競技シーンにも増え始めているのだ。

 

 

 

STAGE:0とは?

 「STAGE:0(ステージゼロ)」は、日本最大規模の高校eスポーツ大会、いわば“eスポーツ甲子園”。全国から1000校を超える高校がエントリーし、『フォートナイト』、『リーグ・オブ・レジェンド』、『クラッシュ・ロワイヤル』の3タイトルで日本一を競っている。昨年は舞浜アンフィシアターにて数千人の観客を集め、オンライン配信では累計100万人を超える視聴者数を獲得するほどの大盛り上がりを見せた本大会だが、第2回となる今回は新型コロナウイルスの影響によりオンラインでの開催となった。

 舞台はいよいよ決勝ラウンド。各地域の予選大会を勝ち抜いた強豪校たちが、4日間にわたって各種目で日本一の座を争う。
 初日の『フォートナイト』部門では角川ドワンゴ学園N高等学校のチームが3連続ビクロイで圧巻の優勝を飾った。2日目の本日から明日にかけては、『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、LoL)部門の決勝トーナメントが行われる。トーナメント表は以下の通り。

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STAGE:0(ステージゼロ)全国高校対抗eスポーツ大会 公式サイトより

 

注目すべき4人のコーチ

 今回、この記事で紹介したいのは、これらの決勝進出校にコーチとして招聘されている元プロ選手の4名。かつて日本のトップリーグ(LJL)で活躍した彼らだが、驚くべきことに、全員が同じプロチームRascal Jester(以下、RJ)のOBだという。

県立岐阜商業高等学校 iSeNNコーチ

 このツイートの主は、中部ブロック代表・県立岐阜商業高等学校でコーチを務める iSeNN アイセン 氏。
 iSeNN氏は元警察官という異色の経歴を持ちながら、2017年にRJのサブとしてLJLデビュー。2019年にはLJL新参入チームAXIZでスタメン出場し、助っ人韓国人の多いポジションで果敢に戦うアグレッシブな日本人選手として人気を集めた。選手を引退した今年は一般企業に勤めながら韓国リーグLCKの日本語配信などでLoLの解説者としても活動し、好評を博している。

 岐阜商業高校は、全ての部員がLoL歴10ヶ月以下という初心者ながら、昨年のブロック代表・松本工業高校との熱戦を制して決勝進出を果たした。LoLプレイヤーならば、「始めたての女子高生がアフェリオスでクアドラキルを獲った」と言えばその“ガチ”っぷりが理解できるだろう。卓越したチームワークとマクロゲームの動きはプロさながらで、その戦いぶりを目にした大会解説のRevol氏が驚きのあまり彼らのLoL歴を何度も疑ったほどだ。

 

角川ドワンゴ学園N高等学校 Lillebeltコーチ

 先のツイートで「リールさん」と呼ばれていたのは、九州・沖縄ブロック代表のN高こと角川ドワンゴ学園N高等学校でコーチを務める Lillebelt リールベルト 氏。
 その柔和な人柄から「大天使」の愛称でファンに親しまれているLillebelt氏だが、元々は2014年のリーグ創成期からRJでサポートとして第一線で活躍した選手。引退後はLJLCS(当時の2部リーグ)の解説を経て同チームのコーチに就任し、約3年間指揮を執った。現在は再びLJLの公式キャスターとして解説を務める傍ら、アマチュアの選手やチームの育成に力を入れている。プロアマ問わず多くのチームで指導を経験している、LoL界きっての名将だ。

 N高は昨年のSTAGE:0で全国制覇を果たした高校であり、今大会も優勝候補筆頭。スターダストプロモーション所属のモデルとしても活動するShakeSpeare選手が注目を集めているが、チャレンジャーにも到達したPrimo選手のほか、全体として高レートの選手が揃った実力派チームで、連覇への期待も大きい。

 

ルネサンス大阪高等学校(?) Alleycatコーチ

 同じく「ありきゃさん」とは Alleycat アーリキャット 氏。大会の配信やSNS等を見ても明言は避けられているが、おそらくは関西ブロック代表・ルネサンス大阪高等学校のコーチだろう。
 補足:大会配信にて「両チームが元プロのコーチをつけている」との言及があったこと、Alleycat氏のTwitterにて「決勝大会にて待つ」という発言があったこと(=ブロック代表決定戦Day1通過校)、Alleycat氏が大阪出身であること等から筆者が推測しました。もし間違っていたらすみません……。

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画面中央やや下、選手を背後から見守っているのはAlleycatコーチ…?

 Alleycat氏は、その名の通り野良猫のごとく数多のアマチュアチームを渡り歩いた後、2016年にSCARZでプロデビューして翌年にRJへ移籍したプレイヤー。普段は飄々としていながらも時には実況解説が声を揃えて驚くほどのプレイも見せる器用な選手として知られた彼は、複数回のポジションチェンジといった困難さえものともせず、リーグ最年長選手として常にチームを助け、その豊富な経験と柔軟性でいぶし銀の活躍を見せていた。

 2018年に日本初のeスポーツ専攻を開設したルネサンス阪高校は、昨年の全国大会でベスト4に進出した強豪校。ブロック決勝ではLJLのトップチーム V3 esportsとも提携するアートカレッジ神戸を相手に終始有利に試合を進め、最後は華麗なバロンベイトで相手を罠にかけて勝利。ランクで見てもダイヤモンド帯の選手を多く擁する、個人の腕前も確かなチームだ。

 

クラーク記念国際高等学校 Yukiコーチ

 最後の一人は関東ブロック代表2校のうちの1校、クラーク記念国際高等学校でコーチを務める Yuki ユキ 氏。
 アメリカからの帰国子女でもあるYuki氏は、2016年に帰国すると当時2部リーグ落ちしていたRJに加入。1部・2部リーグの間で昇格と降格を繰り返す多難なプロ生活だったものの、チームのコーチで同ポジションの先輩でもあるLillebelt氏の指導の甲斐あってか目覚ましい成長を見せ、多くのファンに愛されるLJLでも有数の選手となった。引退後はRJのチームスタッフとして選手のマネジメントからゲーミングハウスのご飯づくりまで幅広くチームを支えたが、現在はチームを離れて指導者の道を進んでいる。

 クラーク記念国際高校は、秋葉原ITキャンパスのeスポーツ専攻に所属する生徒たちのチーム。昨年はブロック代表決定戦で涙を呑んだものの、今年はリベンジを果たして決勝ラウンドへ進出した。優勝するとYukiコーチの手作り料理をふるまってもらえるとのことで、チーム名も「Yuki飯食べ隊」と名付けて一丸となって戦っている。

 

 

 

白熱する戦いがもたらすものは?

 これら4人のコーチが率いるチーム同士の対決は、同門のライバル対決もしくは師弟対決の実質的な代理戦争の様相を呈する。奇しくもトーナメントではバラバラに分かれている4校だが、一体勝ち上がるのはどのチームになるのか、はたまたこれ以外のチームが全て蹴散らして行くのか……。果たして、因縁のRJ同門対決は見られるだろうか。

 かつては同じチームに所属してプロとして苦楽を共にした選手たちが、後進を育てて競い合う。そんな時代が、ついにLoLの学生競技シーンにも訪れた。日本のeスポーツの成長と発展が、このSTAGE:0の舞台にはある。

 学校によって差はあれど、他のメジャースポーツと比べても遜色ないレベルの環境や組織が形成されつつある。
 そして、そのような環境や組織を整えた学校が順当に勝ち上がっている。元プロのコーチを招いたチームは他にも複数あるが、全国大会進出を逃しこそすれ大敗することはなく、少なくともブロック決勝辺りまでは駒を進めている。これはLoLというゲームの性質ゆえの結果でもあるが、やはり強いコーチを招いたチームは強くなれるということだ。

 こうした流れが加速していけば、各所で折に触れて懸念される“プロゲーマーのセカンドキャリア問題”も、次第に解決されていくことだろう。

 昨年の上位チームからプロ入りを果たした選手が現れていることからもわかる通り、このSTAGE:0はプロゲーマーへの登龍門として機能している。「この大会で好成績を収めることはプロゲーマーとしてのキャリアにつながる」とわかれば、学校側としても明確な目標に定めやすい。その目標を達成するために、学校は環境を整えるための様々な努力を尽くすことになる。
 その際に、今回のように元プロゲーマーのコーチが全国大会出場といった実績を残している事実は大きい。県岐商のように初心者ばかりのチームでも、指導者の力によって全国大会まで進出できるというのだから、殊更にコーチの影響力は際立つ。「元プロをコーチに呼べば勝てる」という考えが浸透すれば、そうしたケースが全国的に増えていき、働き口も増えていく……というわけだ。

 プロゲーマーのセカンドキャリアとして、指導者の道がひとつ確固たるものとなるかもしれない。「プロゲーマーなんて引退したら途端に食いっぱぐれる」といった言説も、時代と共に消えていくかもしれない。そんな希望の光が、今回のSTAGE:0におけるコーチ対決から差しているように見える。

 

 もちろん、決勝に進出したチームの中には、顧問の先生が先導して頑張っている学校や、生徒が主体となって勝ち進んできた学校もある。
 あくまでも一つの形として、球児たちを甲子園に導く監督がいるように、招かれたコーチがゲーマーの生徒を全国の舞台へ導いているケースがあり、今大会では特に際立っている……ということが伝われば幸いだ。

 競技への取り組み方は学校によりそれぞれで、これも他の一般的な部活競技と何ら変わらない。ただ、これを頭の片隅に置いておくことで、きっと彼らの戦いの中に新たなドラマが見出せることだろう。

 

彼らの結末を見届けよう

 そもそもの話だが、こうしたコーチに関する予備知識がなくとも、このSTAGE:0はシンプルにエンターテイメントとして面白い。アンガールズ田中+アルコ&ピースの笑いのセンスでステージを盛り上げ、みちょぱ+日向坂46が花を添える。eスポーツに馴染みのない人達が楽しみやすい構成が見事だ。そして、その中心には確かに、高校生たちの青春をかけた戦いがある。
 LoLファンにはおなじみの公式キャスターeyes&revolコンビも、いつものプロシーンより専門用語を大幅に削った実況解説で試合の面白さをわかりやすく伝えてくれる。2年目ということもあってか演者同士の連携も円滑になっていて、「試合 ⇒ 実況解説 ⇒ 芸能人 ⇒ 一般視聴者」という“面白さのリレー”に滞りがなく、誰でも安心して楽しめる。難しいことは考えず、気楽に視聴してみることをおすすめしたい。

 この機会に、是非とも若く熱いeスポーツの世界を楽しんでほしい。

 

 ↓ 試合の様子は以下のチャンネルで生配信 ↓

 TOKYO eSPORTS HIGH! eスポーツハイ! テレビ東京
 https://www.youtube.com/watch?v=WFal9Cb5poE

 ↓ 詳細は公式Twitterより ↓

twitter.com

 

 

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