フリーライターなるしかねえ

社会不適合な若者の日記です

誰でも読める名作大河漫画『ポケットモンスターSPECIAL』

 『ONE PIECE』や『金色のガッシュ!!』、『進撃の巨人』、『キングダム』など、僕たち平成生まれのバイブルとされる漫画は数多くありますが、こういった漫画の話になった際に『ポケットモンスターSPECIAL』の名前を挙げる人は無条件で信頼できます。それくらいにこの漫画は面白く、そして僕にとって思い入れが深い作品です。

 今回はそんな『ポケットモンスターSPECIAL』の魅力を僕なりにお伝えしたいと思います。本当は好きな名シーンランキングとか発表したいけどネタバレになるからやりたくないジレンマ。

 

 

 

 

 

ポケスペ』って何?

 『ポケットモンスターSPECIAL』(以下『ポケスペ』)は、原作・日下秀憲、作画・山本サトシ*1による漫画作品。小学館学年誌(『小学三年生』~『小学六年生』)にて連載されていましたが、学年誌の廃刊以降は季刊雑誌等に移籍し、現在は『コロコロイチバン!』と『サンデーうぇぶり』にて連載が続いています。
 物語はゲーム『ポケットモンスター』の世界で、レッド(赤・緑・青編)を始めとする各世代の主人公たちの冒険を描きます。

 『ポケモン』を題材にした作品というと、サトシを主人公とするアニメ版『ポケットモンスター』や、『ギエピー』ことコロコロ版『ポケットモンスター』の印象が強いですが、『ポケスペ』もまたそれらに並ぶ長寿作品です。
 しかし、上記2作品に比べると知名度が圧倒的に低いのがこの漫画。アニメや『コロコロ』と学年誌との普及率の差でしょうか。なんてもったいない。許せん。

  『ポケットモンスター』の舞台設定の中で、ゲームともアニメとも異なったオリジナルな物語を作り出しているのがこの『ポケスペ』です。ざっくり捉えるなら「超大手の二次創作」と考えてもらってもいいと思います。*2
 あらすじはゲーム本編やアニメ版と変わらず、「博士からポケモン図鑑を受け取った主人公が悪の組織と戦っていく」というのが基本になっていますが、同じ世界観・同じマップ・同じ登場人物を共有しているにも関わらず、全く新しいストーリーが繰り広げられます。

  熱心なポケモンファンの間では鉄板となっている漫画ですが、そうでない人にも是非ともおすすめしたい、とにかく魅力のあふれる名作です。

 

何がすごいの? 

味のある数多くのキャラクター

 漫画の魅力は、何と言ってもキャラクターの魅力です。『ポケスペ』の登場人物は、ビジュアルやおおよその設定はゲームと同じものでありながら、オリジナルの設定が加えられることによってキャラクターの持ち味に深みが増しています。

 何より特徴的なのは、主人公のキャラクター設定です。ゲームでは寡黙なプレイヤーキャラが、アニメでは勇気凛々で元気溌溂なサトシがそれぞれ主人公を務めていますが、『ポケスペ』には赤・緑・青編からサン・ムーン編まで、各シリーズに個性の豊かな主人公が登場します。原作ゲーム作品における男主人公・女主人公・ライバルにそれぞれユニークな人格が与えられた上に、そこに数名のオリジナルキャラクターまで加えられた、総勢21人もの「図鑑所有者」*3たちが複線的で複層的なストーリーを織り成しています。
 各地のジムリーダーやマサキ、ミナキ、ミツルといったサブキャラクターたちにもオリジナルの脚色が成される上に、劇中で何度も登場します。中には悪役としての側面を加えられたキャラクターもいたり……。
 さらには、短パンこぞうのゴロウ、海パンやろうのヒデノリ、インタビュアーのマリとダイのような一般トレーナーたちにも味のある人格が与えられ、メインキャラの脇を固めています。

 これら多くのキャラクターが見せる人間ドラマは、筆舌に尽くしがたい魅力にあふれています。時にはライバルとして、時には仲間として、主人公たちは互いに影響され合って、物語の中で大きく成長していきます。あえて月並みな言葉を使うならば、今で言う「尊い」要素は全部この漫画に詰まっています。*4 だからオタクは全員読め

 そして、あまりに大勢のキャラクターたちが登場する中でも、各章のクライマックスにはほぼ全員を巻き込んだ壮大な展開が待っているという点がこの漫画の特徴のひとつです。原作ゲームではほとんど一度きりしか会話のチャンスがないキャラクターも、主人公と共に最後まで本筋に関わって来るというのは、原作ファンにとって本当に嬉しい部分ですよね。

 

作者の「大河力」の高さ

 先にも述べた通り、『ポケスペ』は各シリーズにおいて新たな主人公が登場して世代交代していく、いわゆる大河小説的な特徴を持った長編漫画です。ゲーム『ポケモン』本編の新作が出る度に、『ポケスペ』においても新章が始まります。現在*5では単行本も合計66巻にまで及び、第14章まで物語が続いています。
 各章で新しい主人公が新しいストーリーを展開させていく中で、全体の世界観は一貫して保たれているという作品の構造は、まさしく作者の「大河力」の高さを示していると言えるでしょう。

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「1日外出録ハンチョウ」より

 ゲームに基づくという作品の性質上、原作が複数シリーズにわたって存在する中で、それをただ単純になぞっていくだけでは、ひとつの物語にする上で少なからず矛盾が生じる場合があります。
 特に顕著なのが「リメイク版」の存在です。例えば、赤・緑のリメイク版ソフトであるファイアレッドリーフグリーンの発売に伴って、『ポケスペ』がファイアレッドリーフグリーン編を始めようにも、物語の大筋は赤・緑・青編で全て描き終えてしまっているし、同じ展開を繰り返すわけにもいかない……といった具合です。
 しかしながら、『ポケスペ』のファイアレッドリーフグリーン編は、ルビー・サファイア編の後という時系列に乗せて、全く違和感のないストーリーが繰り広げられていきます。こうした「つじつまの合わせ方」の巧妙さにこそ、作者の「大河力」がうかがえます。

  当然、こうした世代交代ものにおける「世代間交流」の面白さも持ち合わせています。前シリーズの主人公たちが、次シリーズの「図鑑所有者」の“先輩”として登場するのはもちろんのこと、ふんだんに用意された“先輩”たちの見せ場がファンの心を引き付けて離しません。
 『デジモンアドベンチャー02』で中学生になった太一が見られるように、『ジョジョの奇妙な冒険』3部で祖父としてのジョセフが描かれるように、時代を超えた繋がりがドラマに奥行きを持たせています。これがマジでたまらん。

ふんだんに『ポケモン』していること

 当たり前のことだろうと思うかもしれませんが、『ポケスペ』はとにかくゲーム『ポケットモンスター』の持つ世界観を忠実に表現している漫画です。それは、『ポケモン』の生みの親である田尻智氏をして「僕が伝えたかった世界に最も近い」と言わしめるほど。
 ポケモンたちは時にそれぞれの生態に見合った行動を起こし、時に様々な表情を見せ、人々と共に物語を紡いでいきます。単なる舞台装置としてではなく、重要な登場人物として躍動するポケモンたちが、読者の心を強く揺り動かすシーンも少なくありません。

 そして何と言っても、漫画の世界で描かれるポケモンバトルは圧巻です。アニメの存在が先に広く浸透している『ポケモン』ですが、漫画においても手に汗握る戦いに魅せられることには変わりありません。
 特徴的なのは、「トレーナー対トレーナー」の構図に焦点が当てられていること。ポケモン同士の技と技のぶつけ合いに留まらず、地形や気象を利用したり、トレーナーを直接攻撃することさえ茶飯事です。絶えず繰り広げられるアイデア豊かなバトルの数々は、『ポケスペ』でしか見られない対決ばかり。全てのバトルに必見の価値ありです。

 世界に当たり前に存在するポケモンの生態。そのポケモンを集めて、育てて、戦うこと。加えて、コンテスト、ポケスロン、バトルフロンティアのようなイベントや施設、さらには原作におけるセリフの小ネタまで、ゲーム『ポケットモンスター』のあらゆる要素が、作中にもれなく描かれています。
 極めつけは、ゲーム本編に登場している“全てのポケモン”と“全ての技”を作中に登場させる*6という徹底ぶり。この漫画はゲーム『ポケモン』の持つ魅力を、文字通り余すところなく引き出している作品なのです。

 

どんな人におすすめ?

 反復になりますが、『ポケスペ』はポケモンファンだけでなく、『ポケモン』に少しでも触れたことのあるすべての人におすすめできる漫画です。
 なんとなくテレビでサトシの冒険を見ていた人、ゲームボーイで何度も殿堂入りを繰り返した人、WiiやDSでWi-Fi対戦に明け暮れた人、スマホでレイドバトルに挑んでいる人、誰が読んでも楽しめるのがこの『ポケスペ』だと僕は断言します。

 少しでも興味を持った方は是非読んでみてください。なんと今ならマンガワンで53巻まで無料!!読むしかねえ!!!

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 個人的には、手軽に楽しみたいライト層には第4章(ルビー・サファイア編)から読むことをおすすめしています。『ジョジョ』を読むときに1部ではなく3部や4部から始めた方が取っ付きやすいかも、みたいなアレと同じです。*7

 

おわりに

 ここまで僕の拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございます。『ポケスペ』の魅力が、皆さんに少しでも伝わったでしょうか。

 僕は日頃から少年ジャンプ好きを謳ってこそいますが、「じゃあ一番好きな漫画は?」と聞かれた時に迷わず挙げるのは『ポケットモンスターSPECIAL』です。
 僕が生まれて初めて単行本を手にした漫画であり、今に至るまで全巻を紙で揃えている唯一の漫画が『ポケスペ』です。小学生の頃から公式ホームページを毎月チェックし、日下先生への質問コーナーを読み漁りました。ファンサイトからリンク集を巡り、二次創作の沼に嵌まりました。ゲームと合わせて、『ポケモン』は僕の青春そのものです。僕にとってこの漫画は、思い出のいっぱい詰まった、かけがえのない作品です。
 そんな僕の思い出補正を抜きにしても、『ポケスペ』は紛れもなく名作と言って良いでしょう。今回の無料配信を機に、この漫画が一人でも多くの人の目に触れることを願っています。

 

 

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*1:9巻までは作画・真斗

*2:もちろん僕は一次創作だと思ってますよ

*3:ポケスペ』における主人公たちの総称

*4:恋愛要素も含む。ルビサファ編は神

*5:2019年4月時点

*6:ブラック・ホワイト編以降は連載ページ数の減少により登場しないものも見られるようになってしまった。が、その方針は変わらずほとんどが網羅されている

*7:マンガワンだとポイントがないと難しいかも。もちろん第1章からが一番面白い